若き数学者のアメリカ

先日、本屋で「若き数学者のアメリカ」(藤原正彦著)を見つけたので早速買ってきて読んだ。分かり易く、とても面白かった。アメリカ滞在の3年間を赤裸々に綴っていて共感を呼び、自分も一員としてその中で暮らしているような親近感を覚えた。終わりのあたりで触れられていた、アメリカの国民性について、すこし紹介してみよう。
アメリカ人自身、“自分はアメリカ人らしくない”とほぼ例外なく言う、そしてそれはおそらく正しい。アメリカ人全部を考えてその平均を取れば確かにアメリカ的なるものが浮かび上がってくるのだろうが、あいにく各個人がその平均からあまりにもばらついているのだ。49と51なる二つの数字は、その平均値50に近いと言えるかも知れないが、0と100なる二数字は、同じく平均値は50であっても、50に近いとは言えないのである。従って典型的アメリカ人とかアメリカ的という一般的言葉は、ほとんど意味を持たない。従って日本人論は存在しても、総括的なアメリカ人論はほとんど存在しえないように思える。」
てんでばらばらで、故郷を持たないアメリカ人がアメリ憲法のもと、何とか国家を維持出来ているのは、その広大で豊かな国土に負うところが大きい、と彼は言う。べトナム戦争で初めての敗北を喫し、今またイラク戦争も泥沼に足を取られそうな状況である。地球温暖化の影響か、トルネードや竜巻、それに山火事による被害で裕福そうな市民の生活が破壊されるニュースを良く見るようになった。アメリカの先行きもとても安穏としてはおれないと考えられる。
著者の見てきたアメリカ、とてもためになる良い本である。    (了)