西郷どん

大河ドラマ西郷どん」が終わった。西南戦争に巻き込まれた西郷どんは、ついに凄惨な死を遂げる。幕府を倒し、新政府の陸軍大将・参議にまで登りつめた人がなぜ最後にあんな死に様を見せたのか、そこに西郷吉之助という人柄がにじみ出る。「敬天愛人」である。彼は決して人を侮らず、私欲を捨てて人を思い、国を思い、天を敬って自らの道を歩んできた。慈悲の心が根底にある。
新しい国造りのための新政府の度重なる改革に、ついていけない武士達不満分子の心情を汲み、これを捨てきれずに結局その旗頭に祭り上げられて、ついに新政府にたてつくこととなった。人としての度量の大きさをみるようで、自分達が捨て石となり武士の世を本当に終わりにさせようとの悲壮な決意があった。以後、新しい世が誕生する。
一方、その最高の功労者たる大久保利通(一蔵どん)がまもなく刺客に襲われて命を落とすあたり、何とも皮肉なものである。
この二人が同郷で小さい頃からの大の仲良しであったのは全くの奇遇でしかない。西郷どんも一蔵どんというしっかり後を託せる親友がいたからこそ、自分の好きな道を突き進めたのではないかと思う。
性格の違いは歴然としている。
誰からも好かれる西郷さん、一方、理路整然として意志堅固な大久保郷、その対比が物語を作った。
大久保郷も好きこのんでこの憎まれ役を買って出たのではない。世の流れが自然とそうさせたのだ。大久保さんも西郷どんも大切な二人、その他の人達も含めて、もし誰かが欠けていたらあのような世の流れは生まれてこなかったであろう。
素晴らしい人達がキラ星の如く現れ、時代を作り現代へと引き継いでくれた。
西郷どん」の心情は私の心にも深く住みついている。
すばらしい大河ドラマであった。上野に西郷さんの銅像があのように堂々と建っているのがよく分かった。   (了)