便利さの影に

今頃、日本では当たり前のようになっている水洗トイレ、それもウォッシュレット付きに日夜慣れ親しんでいると、海外旅行に行って大変困った事になる。先頃、ロシアを旅してきた。それも中心部のモスクワ、サンクトペテルブルグの8日間の旅で、ホテルも割りに高級の方ではあったが確かに水洗トイレながらウォッシュレットは付いてなく、硬そうなトイレットペーパーが置いてある。昔々、新聞紙を切って使っていた頃を経験している世代の私にとっても、毎日この硬めのペーパーで丹念に拭いているとテールパイプがヒリヒリしてくるのだ。
人間、生活習慣で知らず知らずのうちにヤワな方に仕立てられてきていた。昔、べトナム戦争で米軍が自分達の生活環境を確保するために周りを柵で囲み、中に芝生を敷き詰め、簡易住居ながら真っ白くペンキを塗りたくり、清潔な快適空間の中でしか暮らせない、その虚弱体質を笑い、片や原住民と共にあなぐら生活に耐えるソ連兵のタフさに敬意を表したことを思えば、今の日本人もすっかりセレブな人種になってしまったようだ。この快適な生活環境も、何時ひっくり返るか分からない。ヤワな体質に慣れ切ってしまわないような対処方法を日頃から考え、時折実践しておくことが肝要であろう。 (了)