職人気質

sadoji2005-12-28

読売新聞12.26朝刊の“潮流2005”の記事「脅かされた住宅」から。
「住宅」を襲ったのは、補修や設計を業とする、昔風に言えば「職人」だった。なぜ、能力のある「職人」が素人を陥れるような安易な金儲けに走るのか?
多額の負債など様々な体験を経てきた作家、山本一力さん(57)は「私の幼いころは、『やせ我慢』してみせる立派な大人がいた。法律より道義を重んじ、自分の価値を大事にする職人気質の頑固な大人が。そういう人の後ろ姿が見えなくなってきて、ブレーキのかからない、何でもありの世の中になっている」とみる。しかし同時に「あぶく銭は落ち着きません。大人が『やせ我慢』を見せ続ければ、どんな生き方が本当に心地よいか、きっと分かる。金ばかりではない社会へ、必ず揺り戻しが来ますよ」と悲観していない。
今年1月、一時同居していた男のアパートにあるクローゼットから現金約6000万円を盗み出し、知人2人と山分けした約1800万円を3時間後には「こわくなって」蓮田市内の用水路に全額捨てた女(25)、(懲役3年の実刑で、服役中)は動機の1つを、いみじくも「金がすべてと思っている彼を変えたかった」と語ったという。
盗難の被害者である男(26)は、6月25日、違法なリフォーム営業をしていたとして特定商取引法違反(不実の告知)の容疑で埼玉県警に逮捕され、1審で懲役10ヶ月の実刑判決を受けた。彼は住宅リフォーム会社社員の中で、営業成績トップであり、多い月で約400万円を手にしていたという。公判で、この約3年間に350件の契約を取り、約9000万円の報酬を得ていたことが明らかにされた。男の営業報酬は契約額の40%だから、契約総額は約2億2500万円にも上る。
「そう悪いことをしたとは思っていない。契約したのは年寄りばかりじゃない」。逮捕直後、男は弁護士にこう言ったという。まったく、気の休まらない世の中になったものだ。                                 (了)