人生の価値

sadoji2005-10-17

“人生の価値はやる気にある。”この言葉に強い共感を覚える。先日、テレビ「プロジェクトX」で観た蟻田功氏の天然痘撲滅作戦で氏が言っていた言葉である。約25年前、蟻田医師はやりがいを求めて日本を飛び出し、インド、アフリカその他を駆け回り、各国からのボランティア医師のリーダーとなって当時、爆発的に流行っていた天然痘に立ち向かった。既に患者は3千万人と言われた。医療は遅々としてはかどらず、一時只一人の日本人のリーダーの資質を疑問視する意見も出てきた。彼は敢然として言った。「私はまず、インドのベンガル州の天然痘を根絶してみせる。」そこはインドの中、いや世界の地域で最も天然痘が蔓延している所であった。世界中からの温かい援助資金や資材を得て、現地に乗り込んだはいいが、その土地の人々は進んで種痘を受けようとしない。そこには天然痘の神様が居て、天然痘に罹ると御参りし、それで幸福な天国へ行けると信じられていた。
彼は悩み、真剣に考えた。そして思いついた。「そうだ!種痘はインドで神聖とされる牛から作られる。この種痘を受けることによって同じく幸福が得られるのだ。」
彼は村の長老の所へ行き、熱心に説得した。長老が言った。「ワタシにも打ってくれ。」
神様の所へ御参りに来る人達には、その家族に必ず天然痘患者がいた。天然痘を予防するには、まだ病気に罹っていない人達に種痘を打ち、体内に生じる免疫に頼るしかない。患者のまわりの人達に片っ端から種痘を施した。見る見るその効果が表れ、蟻田医師の公言通り、この地域の天然痘が“ゼロ”になったのである。この成果に奮い立ち、世界規模で作戦を展開、ついに地球上から天然痘を根絶させることが出来た。彼がノーベル賞を貰わなかったのが不思議なくらいだ。彼のことだから候補に挙がっても「いや、私だけの手柄ではありません。ボランティアで集まってくれた皆さんの総力で成し遂げられた快挙なのです。」と固辞されたことだろうと思う。撲滅運動の最初から蟻田医師を信奉し、ブラジルから彼の元に来て協力を申し出た医者夫妻がいた。奥様は「私達は、この天然痘を地球上から絶滅させるまで子供を作らない」と言った。活動に忙しくてそれどころではないといった意味もあろうが、こればっかりは年齢制限もあり気を揉ませるが、天然痘根絶後、めでたく誕生した赤ちゃんの名前は“ゼロ”という。この呼び名は通称で正式名ではないらしいが、いかにも目標達成の喜びが伝わってくる。彼等ご夫妻は今もブラジルで病院を開き、貧しい人々の力になっている。蟻田氏と、このご夫妻がスタジオに呼ばれ、来ていた。奥様はデボラ・カーのような美人である。
“人生の価値はやる気にある。”いい言葉であるとつくづく思う。
この日記は、H14.4.5のものである。              (了)