鴨居玲の画業

sadoji2005-10-14

日曜美術館鴨居玲を観た。1980年代に57歳で世を去った異才で、人間の醜さ、汚さを真正面から捉え、画面の中から人間の赤裸々な心情がほとばしり出るような印象的な絵だ。絵描きを志してから、まずブラジルへ飛び、南米で7〜8年過ごしてからスペイン、フランス等とヨーロッパに向かっている。独自の境地はこうして培われた。人に感動を与える絵である。「老婆」とか「教会」等の彼の代表作は、しっかりと眼に焼きついている。
晩年は日本に帰ってきて神戸に住み、「アトリエ」というバーによく通っていたので、今でもそこに彼の絵が何枚か飾ってある。晩年の14〜5年を共に過ごしたという、心の温かそうな女性がいろいろ彼の話をしていた。とても優しくていい人であったが、ことキャンバスに向かうととたんに厳しく、「描けない、描けない」といつもボヤきながら、苦しみながら絵を描いていたそうだ。内面からほとばしり出てくるような激しい人間の苦痛、疎外感、孤独感を彼独特の暗闇の中に封じ込める手法に、大変なエネルギーを要したことがうかがい知れる画面だ。調子の悪い時は手いっぱいに絵筆を何本も挟み、ブツブツ言いながら次々と筆を取り替えていたという。こうした話は近くで見守っていた人からしか聞けない貴重なものだ。彼は立派な業績を残してくれた。いい内容だった。夜の部でビデオに収めることにした。これは、H14.2.4の日記です。            (了)

鴨井玲画集

鴨井玲画集