日本の常識が非常識

例の「講義録」から、話題をもう一つ取り上げてみよう。「日本の常識が非常識」とのキャッチ・フレーズがついている。
「皆さん方、日本の中にどっぷり浸かっていると中々周りのことは分からない。私(片山会長のこと)は海外に住んでみて、日本人は何と自国のことを知らないのかと思い知らされました。外から日本を見ると、非常に日本というのが客観的に見えてくる。日本の常識が案外非常識だということも起こるわけです。例えば、日本の汽車や電車は全く正確に時間通りきっちり来ます。で、これは当たり前だと、これは日本の常識です。世界中、決して時間通りに来るわけじゃない。ところでそこで、ひとつ大きな問題は、駅のプラットホームです。非常に騒々しい。まず「電車が来ます。お下がり下さい。押さないで下さい。無理に乗らないで下さい。駆け込み乗車はやめましょう」。いろんなことを駅のプラットホームでがなり立てております。
交差点の騒音を減らそうという運動が、いろいろされている一方で、駅では、電車は時間通り来るのだから、もうそんなこと言う必要はないじゃないかと思います。親切のつもりなんでしょうが、騒音公害です。ヨーロッパへ行きますと、こんな放送ありませんよ。皆さんが横を向いていたら、汽車は勝手に出て行きます。これは自己責任で、乗りたいというのなら自己責任で乗ればいいので、あれでもかこれでもかという放送は、うるさいだけで、これが日本の常識です。
アメリカに留学した女子生徒が、先生から「みんな自分の国のこと、自分のことをお話ししよう」と言われ、はたと困った。それで先生に相談したら、戦争の頃、日本とアメリカが戦った第二次世界大戦の頃に、生活をしていた家族があるのなら、その時の話を、と言われて書いた手紙が『孫娘から日本への質問状―おじいちゃん、戦争のことを教えて―』(中條高徳著、小学館文庫)なのです。お祖父ちゃんが孫娘のために書いた手紙をまとめて、この本が出来ました。皆さん方も自分の周囲のことを十分勉強していただきたい。そして自分の意見というものをちゃんと持っていただきたい。…」        (了)