バランス感覚

「嗅覚」が大事とはいえ、年中あたりを嗅ぎ回っておられたのでは胡散臭くて仕方がない。そこは自然体の中で、鼻ばかりでなく常に耳目も働かせ、頭も使って生活していきたいものである。言葉、文章とは勝手なもので、最近とみに物忘れが多く、例の「老人力」に押し負けそうな現実の自分の反動として、つい調子の良いことを書き連ねてしまう。
大相撲秋場所で、横綱朝青龍が初日と11目に負け、新関脇琴欧州に12日目で星2つの差をつけられ、当人も半ばあきらめかけていた優勝を、最後の最後、優勝決定戦で勝ち取ってしまった。また、女子ゴルフでは、横峯さくらが最終日、前日の2打差を追いついて、−3で首位に並び、プレーオフ2ホール目で、胸のすくようなバーディを奪って、見事な優勝を果たした。勝負所での瞬発力、集中力は日頃のバランス感覚の上に構築されて、万全の力を発揮する。
ちょっと出来過ぎかなぁ〜と思ったら、自ら自重して手綱を引き締める。どこまで突き進んでいくか、ブレーキをいつかけるかのタイミングは経験、勘がものをいう。
押し並べて見れば中庸を行くことになるのだろうが、突出した時と、数歩下がった時との、そのバランス感覚が大切である。我が家の玄関口に鎮座まします“バランストンボ”のクリクリ目玉を思い出す。“人生は挑戦とバランスなり”と製作者が喝破していたが、正にその通りだ。打たれ強さ、強靭さも、このバランス感覚の中から生まれる。一病息災も、ただただ健康でいるよりもバランス感覚を養う上で、いいのかも知れない。今、ちょっと腰が痛い。中々直りが良くない。でも、こんな事で弱音をはくようでは、星野富弘さんに申し訳が立たない。                 (了)