翡翠の里

縁あって新潟県糸魚川市に行く機会が多い。
翡翠の里”とのことである。
上野の国立科学博物館で“翡翠展”をやっていた時も直ぐに観に行った。
何と良質の翡翠は我が国では糸魚川周辺しか産せず、世界でも5か所位しか産地が見つかっていない。しかも我が国の翡翠は最も古く、5000年前の縄文時代から勾玉(まがたま)や大珠(たいじゅ)として宝飾品に使われていた。
約400点の名品が広く全世界から集められ、安らぎを与えるような淡い、又は濃い緑色に輝いて、会場をしっとりと優雅な雰囲気にしていた。
大きな原石も会場内にゴロンとたくさん置いてあり、これらは手を触れてもいいということで、その温かみのある感触を楽しんだ。
流石に原石は殆ど糸魚川産で、それも地元の個人蔵となっていた。包み込まれた中の宝物を削り出してみたい誘惑に駆られる。“玉も磨かざれば…”である。
表面に大物の片鱗をチラリと見せ、悠然と横たわっている勇姿に見とれてしまった。
最近の工芸品はミャンマー産が多く、濃い緑色である。日本の糸魚川産はもっと淡い緑で白っぽい所が混じり、この方が高貴な潤いがある。
出口の販売所で大枚1000円を払い、翡翠の石片を手に入れた。以前、糸魚川翡翠館で買った瑪瑙(めのう)の茶托に載せて職場の机の上に飾り、毎日楽しんでいる。
翡翠翁”とは、考えついた私の“雅号”である。いずれ印を作ろうと思う。  (了)

日本の翡翠―その謎を探る

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