感動

人間、感動がないと、生きていこうとする意欲も衰えていくのだという。もうどうでもいいやと、投げやりな生活に陥ってしまうのだろう。私も近頃、中々感動を得る機会が少なくなってしまい弱っている。美術館や展覧会、そして自分で夜なべして絵を描いたりしていたが、その絵の方がさっぱり、エネルギーを欠いてしまった。絵か尺八か二者選択を図り、尺八の方を取ることにした。これまで「絵」と「尺八」を半年づつ交互に分けて続けてきたけれど、「二兎を追うものは一兎も得ず」の譬え通りどちらも「虻蜂とらず」の様を呈してきている。私には絵画創作の才がないと見た。日展あたり見に行くと、世の中には絵を本業にしたい人がごまんといることがわかる。とてもああした人たちにはついていけない。
ところで尺八の方はどうだ。これしかないという気持ちで出来るだけ毎日、吹くことにしている。
昨日、千葉県三曲の演奏会が千葉市教育会館であった。しょっぱな(10時半開演)からの出番なので朝8時には家を出た。午後1時頃にもう1曲の出番があり、すっかりお腹を空かせたが何とお弁当は出ないとのこと。「腹が減っては戦は出来ぬ」とばかり、一応荷物をまとめて会場を出た。場合によってはそのまま帰ってもいいかなと思っていた。昼食は千葉中央駅近くのCOCO壱番屋でカツカレーを食べ、さてどうしようかと考えた。演奏会は午後の5時半近くまで27曲もある。引き返しても3時までには会場に入れるのでまだまだ十分に聴いて帰れると思い立ち、のこのこと戻った。そうだ、カセットテープも持参だったのだ。良さそうな曲を4曲ほど吹きこんでみようとも思った。
そして後半部の10曲近くを聴いた。4曲半も録音した。
帰ってから、そのテープを聴き返して「やったー」と思った。沢井忠夫作曲の「雪ものがたり」は最高だ。久し振りに感動した。会場で聴いた時も「いいな」と思ったが、こうしてしっかりテープに取って聴き返してみて、改めて「よかったな」と痛感した。金野鈴道作曲の「小さな祈り」もよかった。やはり「足で稼ぎ」「機会を作って」積極的に前向きに向かっていくべきだ。動けなくなったら死んだも同然ではないか。こうしたことが身に沁みた。しばらくはこのテープで感動を得続けていこう!           (了)