プロ根性

ラスト・マッチ」(盛川友基著)を読んだ。プロボクサー(ライト級)として、三度目の試合に臨む主人公、福永進次の生活ぶり、心境をつぶさに描ききり、一気に読ませてくれる。とことん追い詰められた自分がそこにあった。この試合に何が何でも勝たなければならない。必死の覚悟と行動、ボクシングの真の厳しさをいやという程味合わされる。試合前の減量と苛酷な練習、挫折しそうになる気持ちを何とか奮い立たせて試合に備える。試合前の大事な時期に、恩を受けた先輩のために引越しの手伝いに出かけ、とんでもない事件に巻き込まれてしまう。どうしようもない時はむやみにあがいたりしないで、運を天に任せることも必要だ。結局は事なきを得て、周りの人達の惜しみない助力と温かい声援を受け、最高の状況の中で試合に臨むことが出来た。
読者の一人として、絶対の勝ちを信じていたが、まさかの引き分けに終ってしまう。この悔しさは計り知れないが、現実味がある。著者自らの体験談に近いこの「ラスト・マッチ」の迫真の描写力にハラハラドキドキ、本を読む幸せを改めて感じた。 (了)