滝沢馬琴

群よう子作の「馬琴の嫁」を読んでから、無性に滝沢(曲亭)馬琴作の「南総里見八犬伝」なるものが読みたくなった。
馬琴が82歳で亡くなるまでの間、28年の歳月をかけて完成させた全108巻の長編小説である。
近くの図書館で探したら、栗本薫の「里見八犬伝」という一冊の本が見つかった。これには第1話から第4話まであり、あとは「そののちのあらすじ」として概略紹介されているだけである。
名犬「八房」と「伏姫」、そして「八犬士」の現れるいわれなど、大切なこのお話の出だしが良く分かる。
仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八犬士が持つ白い珠。以下巻末の解説から引用する。
「いわゆる「勧善懲悪」の思想を原則としていますが、「八犬伝」で懲らすべき悪とは、世間に横行している個人としての悪人どもだけではなく、管領や室町政権などの体制側の「悪」をも懲らすべき「悪」としていることです。その意味では「八犬伝」は八犬士たちの冒険や活劇をおもしろく展開しながら、時代の全体に対してつよく批判する小説でもあったのです。」
とてもおもしろかった。人がバッタバッタとよく切り殺され、もっと「人命尊重」を訴えたい気がしたが、昔はこんなものだったのかもしれない。                        (了)