感動を求めて

感動がないと、人間は老ける、衰えが早まると言われている。
あのアウシュビッツ収容所で獄中の1人が「ああ、夕日が美しいよ。」と感嘆の声を上げた時、「どれどれ」と見に行った人たちはしっかり生き延び、「そんなのどうでもいいよ」と動かなかった人たちが死んでいった、というデータが残っているとか。
最近、私も感動が減ったと感じて久しいが、これではいけないと気が付いた。感動は受け身で得るものではなく、自ら進んで求めていくものである。
ここ数週間で私の得た感動を並べてみる。
1 テレビ「やすらぎの郷」で大御所「有馬稲子」が「八千草薫」演じる亡き友「姫」に捧げて「ゴンドラの唄」を一人で切々と
 しかも堂々と2番まで歌ったこと。人前で披露するほどのいい声というわけでは決してなく、ありのままのお年寄りの声ながら、
 「いのち短し、恋せよ乙女〜」とそこに深い情が籠っていて聴かせてくれた。その時の情景と歌声は今も忘れられない。
2 先日、上野の都美術館で「ボストン美術館展」を観た。目玉はテレビで紹介されていた英一蝶の「涅槃図」であったが、モネの 風景(大海原と遠景の山々)とルノワール静物「陶製ポットに生けられた花」を見つけた。見慣れない題材に惹かれ、とても感 動した。
3 昨日、NHKBSプレミアムの「大岩壁に挑む!登山家夫妻日記」を見た。グリーンランド未踏峰の大岩壁を山野井夫妻が友人と3 人で組んで、綿密な準備の末、約3Wかけて挑んだ登頂記録である。
 ほぼ垂直に近い、高さ千メートルを超える大岩壁をよじ登るのである。とても人間業とは思えない。しかも彼らは過去の体験から 凍傷を負い、手足の指は既に半分くらい欠損していた。これではいくらがんばっても握力は正常の6割くらいしか出ない。
 それでも日夜の鍛錬とあとは気力で頑張った。常に命の危険と隣り合わせ、長時間の緊張が続く。登り始めて16日目に頂上に立つ ことが出来た。人間、こうと決めたら成し遂げられるものだと感動した。
4 尺八仲間の山崎先生から、本人の主催する和楽音の演奏会のDVD2枚を送ってもらっていた。
  昨日、ようやくそのうち1枚を聴けたのだが、10曲も入っている。後半の7、星空への想い 8、陰陽句 9、雪ものがたり
  10、花は咲く に感動した。 これらをもっと頻繁に聴いておきたいし、今後もっといろいろな曲目を聴いて感動を求めてい きたいと思った。
  以上、ここ2Wくらいでこんなに感動を得る機会が増えた。じぶんも少し若返った気がする。     (了)