「車」

暮れから正月明けにかけて得難い体験をした。今もその継続中だが、いつも当たり前のように使っていた便利な足、「車」が使えなくなったのだ。
暮れも押し詰まった12月29日の早朝、師走の忙しい計画の元、急いで駐車場へ向かった。エンジンをかけてアクセルを踏んでも思うように発進してくれない。あれっ、暖気運転不足がたたったのかな、としばらく車が温まるのを待ってから又、やってみたが状況は一向に良くならない。それでもノロノロと前に進み始めた。こんな状態では先が思いやられる。まず、駐車場出口の左カーブの所でうまく曲がってくれない。ブーブーと吹かし音だけ鳴って動かない。大汗かいて、なだめすかしながら坂道を下り、何とか通りへ出た。適当な所で車を止め、助けを求めようと電話をすることにした。暮れの29日では留守番電話になってしまう。緊急のJAFの電話番号があったのでそこにかけた。20分くらいで来てくれるという。妻が何事かと心配顔で近くへ来た。今日はもう、車は使えないよ、と言ってJAFを待った。
ガッチリした車体のレッカー車が来てくれた。故障の原因は「エンジンミッションのオイル漏れ」のようでそのまま動かしていると今に完全に止まってしまいますよ、とのことでまた、今の時期、正月休みに入り、どこへも運び込むところがない、正月明けまで待って改めて修理工場へ運び込む以外に手はないとも言われた。今のところ何とか自力で動くので、それでは駐車場へ戻るまで見守ってくださいと言って元の所へ無事に帰れた。レッカー車はそれを見届けてから帰って行った。あのJAFの人には本当に良いアドバイスをして頂き、助かった。
それから後は全くの「車なし生活」で年越しをした。不便とはいえ、いずれこうした生活が待っていると思い、「車なし生活のシミュレーション」をしておこうと妻と笑い合った。
バスと電車、自転車、それにモラージュバス(近くのショッピングモールが運行)、そして何よりも徒歩の活用である。柏駅から南柏のイオンへ運行するイオンバスも活用した。極楽湯へは歩いて行った。豊四季にある、お墓の掃除へ行っての帰り路、途中で洒落た喫茶店に寄って優雅な雰囲気も味わった。元日には寒い中、しっかり並んで福袋を買い、初詣にも行った。
車はないならないで、何とかやれるものである。
今日は5日、昨日の4日朝に電話して、すぐにホンダ柏が車載車を連れてきて工場へ運んで行った。明日の6日には車が直り手元に戻ってくるという。車も部品交換で済むそうで、まだまだ買ってから3年目なので費用はかからないと思う。
「悪夢の8日間」という思いはない。それなりに良い体験をした。私達の不便さばかりでなく、まわりの人達にも多大なご迷惑をかけてしまったが、「車ありき」の生活に慣れ切ってはいけないという警告と受け止めている。
いずれこうなっても大丈夫という自信はついた。車が戻ってきたら、またしばらくはしっかりと「車社会」を謳歌しようと思う。                         (了)